8.

 

 一週間がたった。
 カドイデ教授の容疑は濃くなる一方だったが、逮捕につながる証拠が見つからない。
 深夜、聞き込みを終えて署に戻った私に、警部さんが心配そうに声をかけた。
「サチ、ちょっと休んだら? 昨日はほとんど寝てなかったし。 なんかつらそうな顔してるわよ」
「はい…それじゃ、ちょっとだけ失礼します」
 警部さんの言葉に甘えて捜査本部を後にする。
 この身体になって以来、身体が疲労を訴えない分、精神の疲れを強く感じる気がする。
 それに加えて、定期的に襲ってくるあの疼きがやってきてしまった。
 
(早く、誰かに見られないところに…)
 昔、あの女に調教されたときに、私の脳に刻み込まれた果てしない絶頂の快感。
 以来、私はしばしば抑え難い衝動に襲われるようになってしまった。 
(う、う…)
 廊下を歩きながら、無意識に下半身に手が伸びる。 金属の殻の内側に液が満ちるのを感じながら、
私は女子トイレの個室、署内でいつも性欲を開放する場所に向かった。

 

 

 
 

 機械の身体である私は、もちろん食事もしないし排泄もしない。 だから私がトイレに入るところを
見られたら、きっと怪しまれる。
 時刻は深夜だったけど、念のために大きく迂回してから一番隅のトイレへ向かった。
 逸る気持ちを抑えながらトイレのドアを開けると、
「えっ?」「あっ!」 
 そこにいる筈のない人がいた。
「警部さん…」
「サチ…なんでここに?」
「それ、こっちの台詞なんですけど」
 言うまでもなく、警部さんも排泄をすることはない。 なら、どうして警部さんが人目を避けるように
トイレに来ているのか。
 
 
「と、いうわけで、警部さん。 説明してもらいましょうか」
 背後から警部さんの身体を抱きすくめて連れ込んだのは、署内の取調室。
 悪戯心に思いついた場所だけど、尋問の行われていない取調室って、結構穴場だと思う。
「それは、その…ちょっと」
「別に恥ずかしがらなくてもいいですって。 私だってそのつもりでトイレに行ったんですから」
 右腕で警部さんを抱きとめながら、左手を下腹部へ滑らせていく。
「───っ」
 焦らすように、金属の殻の上から警部さんの秘所を撫でる。
 背後から横顔を覗いてみると、警部さんは恥ずかしそうに目をぎゅっと閉じていた。
「せっかくだから、一緒にしましょうよ。 いいですよね?」
 警部さんはうんとは言わなかったけど、イヤとも言わなかった。 
 ゆっくりと警部さんの下腹部ハッチを開くと、掌ほどの面積の人工皮膚に覆われた股間と、
その中央のピンク色の割れ目があらわになった。

 

 

 

 後ろから警部さんを抱いた格好のまま、二人でゆっくりと床へ腰を下ろす。
 警部さんのM字に開かれた脚の付け根に、ゆっくりと手を近づけ…
「えっ、ちょっと、サチ!?  何を、」
 ハッチの隅にあるイジェクトボタンを押した。
 ガチャン、というジョイントの外れる音。
「ふふ、弄られることを期待してました?」
「あ、それは…」
 私の左手には、警部さんの股間から引き抜いた人工性器が握られている。
 人工の膣と、それを蠕動させるモーターからなる筒状の機械。
 肉感豊かな上面と、機械むき出しの側面の組み合わせが、とても卑猥に見えた。
「ほら、警部さんのアソコ、濡れてますよ」
 人工の蜜で濡れた花弁を、警部さん自身の目の前につき出す。
「──や、やめて…恥ずかしい」
 普段からは想像もつかないほどしおらしい声。
(警部さんも、こんなに可愛い顔するんだ…)
 そこでふと思った。 もっと苛めてみたら、どんな警部さんの姿が見れるんだろう、と。
 
「警部さん、あの鏡のほうを向いて、座ってくれませんか」
 取調室の鏡といえば、そう、マジックミラーだ。
「い、いいけど、何をするの?」
「それは、お楽しみです。 あ、音声出力は私への無線通信に切り替えておいてくださいね」
 そう言って、私は隣の部屋、警部さんが向いているマジックミラーの裏面へ向かった。

 

 

 

 マジックミラーを挟んで座る私たち。
 相手の姿が見えているのは私だけ。 警部さんには、鏡に映る自身の姿しか見えていない。
『どうですか、警部さん? アソコを盗まれちゃった気分は』
『う……』
 人工性器を取り外された警部さんの股間は、くりぬかれたような空洞になっている。
 そして、その空洞から伸びる数本の延長ケーブルが、私の手元、警部さんから奪った人工性器に繋がっている。
『それじゃ、ちゃんと接続されてるか、チェックしてみますね』
 金属の指で、そっと偽りの肉に触れる。
『ひっ』
 鏡の向こうで、警部さんの身体がピクリと反応した。
『あ、ちゃんと繋がってるみたいですね』
 一度手を離し、警部さんの身体のこわばりが消えるのを待つ。 そして、気が緩んだころを見計らうと、
私は何の前触れもなく、警部さんのクリトリスをぎゅっと押しつぶした。 
『ぁああっ!?』
 一拍子遅れて、警部さんが悲鳴を上げる。
『…警部さんの顔、可愛い』
 もっとその顔を見ていたくて、私は何度も何度も陰核を刺激した。
『ちょ…と…まって…まって!』
 警部さんが身をよじる。 アソコを庇うように、両手で股間を押さえているけど、もちろん効果はない。
そこにあった性感帯は今、私の手中にあるのだから。
 
(…警部さんを見てるだけなのに…また、濡れてきてる)
 自分の股に目をやると、閉じたハッチの隙間から私自身の愛液が滲み出ているのが見えた。
 殻の内側に納まりきれなくなった液は、私の金属の太ももに光る筋を残し、膝をついた床に水たまりを形成していた。
 片手で警部さんへの愛撫を続けながら、もう片方の手でもどかしく下腹部のハッチを開けると、
内側に満々と湛えられた液がとろりと溢れた。

 

 

 

 ぬちゃり、ぬちゃり、と、薄暗い部屋の中で、私と警部さんの湿った音が混じりあう。
『うあっ…あ』『あぁ…』
 私たちの中では信号化されたあえぎ声が響きあう。
『ねえ…警部さん…何か、欲しいと思いませんか?』
『──っ…?』
 主の身体から分離されているにもかかわらず、警部さんのアソコはいやらしく蠢いている。 
まるで何かをねだるように。
『ちゃんとした玩具があればいいんですけど、この部屋にはこんな物しかなくて…』
『…ちょ…ちょっと、何!? 何をする気!?』
 警部さんには、私の手に握られた極太のマーカーペンが見えていない。
 怯えた顔を横目に、私はそれを警部さんの分身に突き入れた。
『なっ、何っ!? あっ、ああああっ!?』
 グイと、先端のほんの数センチだけ残して、極太のペンを押し込んでいく。
『やめ…やめて…! 駄目、壊れちゃう…!!』
『大丈夫ですよ。 カズヒロさんの作ったパーツは、そんなにヤワじゃありませんから』
『ち、違うの…そうじゃ、なくて…駄目、動かさないで…』
(本当に可愛い……警部さんのこんな顔を知ってるのは、私だけなんだろうか)
 そこで、ふと思い出した。 確かカズヒロさんは警部さんに惚れていたはず…
なら、警部さんの方は、カズヒロさんをどう思ってるんだろう。
 
『ねぇ、…今 警部さんのアソコが咥えこんでるモノ、何だと思います…?』
『……?』
『例えば、そう、こっちの部屋にあらかじめカズヒロさんが潜んでいて…』
『え…そんな、嘘でしょ…!?』
『鏡越しに警部さんの姿を見つめながら…自分のイチモツを、今まさに警部さんの膣に入れてるとしたら?』
『い、いやぁ…!』
 警部さんの顔が、これ以上ないくらいの羞恥に染まっていく。
 それで分かった。 要するにカズヒロさんと警部さんは両思いだったんだ。

 

 

 

 あとは、ただひたすら責め続けた。
 警部さんに突き刺さった極太のペンをえぐるように動かし、もう片方の手で私自身のクリトリスを擦る。
 何も考えずに、ただただ責め続けるうちに、本当に何も考えられなくなって、そして絶頂に達する瞬間、
『あああぁぁぁーっ!』
 どちらともつかない悲鳴が頭の中に響いた。
 
 
 
「ほら、起きて、サチ。 誰かに見られたらどうするの?」
「え、え?」
 どうやら、イッたまま眠ってしまったらしい。 もともと疲れが溜まっていたのだから、当然かもしれないけど。
「そうだ、床の汚れとか…」
「も、もう片付けは済ませておいたわよ。 さあ、早く仮眠室へ行って、ゆっくり眠ること」 
 さすがは警部さん、もういつもの調子を取り戻している。 ちょっとぎこちないけど。
 
 警部さんに送られて、私は署の仮眠室に着いた。
「それじゃお休み。 また明日から捜査で飛び回ってもらうから、覚悟してね」
 私がベッドに横になるのを見届けて、警部さんは捜査本部へ戻っていく。
 その背中に、私はさっきから気になっていた事を訊いてみた。
「あの、さっきのエッチの後…警部さんのアソコに刺さってたマーカーペン、自分で抜いたんですか?」
 ガタン、と。 警部さんが転びそうになった。